心音が生まれる仕組み|ドクンドクンという心臓の音は本当に弁が閉じる音なのか?

心音が生まれる仕組み

静かな夜、布団に入っていると、自分の胸の奥から「ドクン、ドクン」と響く音を感じたことはありませんか。

私たちは当たり前のようにその音を聞いていますが、その正体を深く考えたことは意外と少ないかもしれません。

多くの人は「心臓の筋肉が力強く動いている音」だと思っています。

しかし実際には、その考えは少し違います。

心音のほとんどは筋肉がぶつかる音ではなく、心臓の中にある弁と血液の流れが生み出す振動音なのです。

今回は循環器生理学の視点から、私たちの命を支える心音の秘密をじっくり解説していきます。


心音の正体は筋肉の音ではない


心臓は一日に約10万回も拍動しています。

もし本当に筋肉同士が強く衝突して音を出しているのであれば、心臓はとても長持ちしないでしょう。

実際の心音は、血液の逆流を防ぐための「弁」が閉じる瞬間に発生する振動によって生まれています。

心臓には4つの重要な弁があります。

弁の名前主な役割
僧帽弁左心房から左心室への血流を管理
三尖弁右心房から右心室への血流を管理
大動脈弁左心室から全身へ血液を送る出口
肺動脈弁右心室から肺へ血液を送る出口

これらの弁は一方向にしか開かない高性能なドアのような存在です。

心臓内の圧力が変化すると弁が自動的に開閉し、血液が逆流しないように制御しています。

そして弁が閉じる瞬間に発生した振動が胸壁へ伝わり、私たちが聞く心音となるのです。


第一心音と第二心音の違い


医師が聴診器で心臓を聞くと、

「ドクン・ドクン」

ではなく、

「ラブ・ダブ(Lub-Dub)」

という二つの音として聞こえます。

これを第一心音(S1)と第二心音(S2)と呼びます。


第一心音(S1)

第一心音は心室が収縮を開始する瞬間に生じます。

血液が心室に十分たまった後、心室が強く収縮すると圧力が急上昇します。

すると血液が心房へ逆流しようとするため、

  • 僧帽弁
  • 三尖弁

が勢いよく閉じます。

この閉鎖による振動が第一心音です。

特徴内容
発生時期心室収縮開始
関与する弁僧帽弁・三尖弁
音の特徴低くて長い
表現「ラブ」

第二心音(S2)

血液を送り出した心室はその後弛緩します。

すると大動脈や肺動脈へ送り出された血液が逆流しようとします。

それを防ぐために、

  • 大動脈弁
  • 肺動脈弁

が閉じます。

これが第二心音です。

特徴内容
発生時期心室拡張開始
関与する弁大動脈弁・肺動脈弁
音の特徴高くて短い
表現「ダブ」

第一心音よりもシャープで鋭い音として聞こえることが特徴です。


心音は流体力学が生み出す生命のシンフォニー


循環器学を学ぶと驚くことがあります。

それは心臓が単なる筋肉ではなく、極めて精密な流体機械として働いていることです。

血液の流れは、

  • 圧力差
  • 流速
  • 血管抵抗
  • 血液量

によって決まります。

心エコー検査では血流速度から圧力差を推定するために、

ΔP = 4v²

という修正ベルヌーイ式が使われます。

ここで、

  • ΔP=圧力差
  • v=血流速度

を意味します。

つまり心音とは単なる音ではありません。

心臓内部で発生する圧力変化と血液の運動エネルギーが生み出す振動現象なのです。

私も生理学を勉強し始めた頃、前負荷や後負荷、等容性収縮といった概念に苦戦しました。

しかし目に見えない圧力変化を理解した瞬間、心臓という器官がいかに精巧なシステムなのかを実感し、本当に鳥肌が立ったことを覚えています。


コリのワンポイント

💡 第一心音を最もはっきり聞きたい場合は、左乳頭の少し下に手を当ててみましょう。

そこは心尖部と呼ばれ、僧帽弁が閉じる振動が最も伝わりやすい場所です。


心雑音はなぜ生まれるのか?


正常な心音以外に、

  • シュー
  • ゴー
  • ザー

といった音が聞こえる場合があります。

これを心雑音と呼びます。

心雑音の原因は血液の乱流です。

本来は滑らかに流れるはずの血液が、何らかの理由で渦を巻くことで異常音が発生します。


弁膜症による心雑音

最も多い原因が弁膜症です。

弁閉鎖不全症

弁が完全に閉じず、血液が逆流します。

弁狭窄症

弁が硬くなり、開口部が狭くなります。

狭い場所を血液が高速で通過するため、乱流が発生します。

ホースの先端を指でつまむと「シュー」と音が大きくなるのと同じ原理です。


正常心音と異常心音の比較


種類発生原因音の特徴臨床的意味
S1房室弁閉鎖低く長い正常
S2半月弁閉鎖高く短い正常
S3急速流入ギャロップ音成人では心不全疑い
心雑音血流乱流シュー音弁膜症など

特に成人で聞かれるS3は心不全の重要なサインになることがあります。


若い世代にも見られる機能性心雑音


最近では若い世代でも、

  • カフェインの過剰摂取
  • 睡眠不足
  • ストレス
  • 激しい運動

などによって一時的な機能性心雑音が聞かれることがあります。

これらは病気ではないことが多いですが、

  • 胸痛
  • 息切れ
  • 動悸
  • 失神

などを伴う場合は循環器内科での検査をおすすめします。

特に心エコー検査は弁の状態や血流を直接観察できる非常に有用な検査です。


Once we understand how heart valves create the familiar heart sounds, a fascinating question naturally follows:

How does the heart generate its own electrical impulses without any external power source?

Although we often describe the heart as a pump, it is actually much more than that. The heart functions as a highly sophisticated biological system equipped with its own electrical generator and conduction network.

Electrical impulses begin in the sinoatrial (SA) node and travel through specialized pathways to the atria and ventricles, coordinating every heartbeat with remarkable precision.

These electrical events trigger muscular contractions, drive blood flow, and ultimately cause the valve movements that produce the characteristic heart sounds we hear through a stethoscope.

Understanding heart sounds therefore requires not only knowledge of valves and blood flow, but also an appreciation of the heart’s remarkable electrical system.


心臓弁が生み出す心音の仕組みを理解すると、次に気になってくるのが

心臓はどうやって電気を生み出すのか?

という疑問ではないでしょうか。

私たちは心臓をポンプに例えることが多いですが、実際には単なる筋肉の塊ではありません。

心臓には自ら電気信号を発生させる発電装置と、それを全身へ伝えるための精巧な電気伝導システムが備わっています。

電気信号は洞結節から始まり、心房と心室へ順番に伝わることで規則正しい拍動を生み出します。

その収縮によって血液が送り出され、弁が開閉し、私たちが聴診器で聞く心音が生まれるのです。

つまり心音を深く理解するためには、血流や弁の働きだけでなく、心臓の電気伝導系についても知る必要があります。


コリのまとめ


毎日胸の中で鳴り続けているドクンドクンという音。

それは単なる音ではありません。

血液を正しい方向へ送り続けるために開閉する弁の音であり、圧力差と流体力学が生み出した生命のメッセージです。

私たちが眠っている間も、仕事をしている間も、落ち込んでいる日でさえも、心臓は休まず働いています。

今夜は少しだけ胸に手を当ててみてください。

聞こえてくるその音は、きっと今までよりも特別に感じられるはずです。


参考文献

  • Guyton AC, Hall JE. Textbook of Medical Physiology.
  • Lilly LS. Pathophysiology of Heart Disease.
  • Klabunde RE. Cardiovascular Physiology Concepts.
  • American Heart Association (AHA)

よくある質問(Q&A)

Q1. 心臓の音が普段より大きく聞こえるのは病気ですか?

A. 必ずしも病気とは限りません。運動後や緊張状態、カフェイン摂取後には心収縮力が高まり、一時的に心音が強く聞こえることがあります。ただし安静時にも続く場合は受診をおすすめします。


Q2. イヤホンをしていると心拍音が聞こえることがありますが、これは心音ですか?

A. 多くの場合は心音そのものではなく、耳周辺の動脈を流れる血液による拍動音です。拍動性耳鳴りと呼ばれることもあります。


Q3. 聴診器による診察と心エコー検査は何が違うのでしょうか?

A. 聴診器は心音や心雑音を聞いて異常を推測する検査です。一方、心エコーは弁の動きや血流を直接観察できる精密検査です。


心音が生まれる仕組み 心音が生まれる仕組みと血流の動きを研究するコリサイエンスのタヌキ研究員
心音が生まれる仕組み 心音が生まれる仕組みと血流の動きを研究するコリサイエンスのタヌキ研究員

#心音の仕組み #心臓弁 #循環器生理学 #心雑音 #血行動態 #聴診 #心臓健康


👉 心音が生まれる仕組み あわせて読みたい

この記事が参考になった方は、下の記事もあわせて読んでみてください。
同じテーマを、より広く、より深く理解するのに役立ちます。

冠動脈循環の特徴と仕組み:心臓はなぜ収縮時ではなく拡張時に血液を受け取るのか?

後負荷とは?高血圧が心臓に負担をかける理由

フランク・スターリングの法則とは?心臓が自ら収縮力を調整する驚きの仕組み

心拍出量の正常値と意味:心臓の健康を左右する重要な指標をわかりやすく解説

毎日ひとつ知るだけで世界がもっと鮮やかになりますよ。
次の科学のお話でまた会いましょう — KoriScience

댓글 남기기

광고 차단 알림

광고 클릭 제한을 초과하여 광고가 차단되었습니다.

단시간에 반복적인 광고 클릭은 시스템에 의해 감지되며, IP가 수집되어 사이트 관리자가 확인 가능합니다.